アメリカのロースクールに行かずに、育休中にカリフォルニア州の司法試験に合格した日本人弁護士がどんな勉強をしてたのかブログ

このブログの趣旨と私のバックグラウンドはタイトルのとおりです。

カリフォルニア州の司法試験は、アメリカのロースクールを卒業していなくても、日本で弁護士登録をしていれば受験することができます(私は育休を理由に休職した際も弁護士登録は残していました。)。

自分の英語力をTOEFLのスコアで測ったことはありませんが、2歳〜5歳の間アメリカに滞在していた経験はあります。英語の発音や聴き取りの耳だけは残っていたからか、英語の勉強は好きな方で、英語の読み書きに対する苦手意識も少なく、仕事で英語を使うこともありました。

私がカリフォル二ア州の司法試験に合格したのは、同州の試験制度が大きく変わった2017年7月以降なので、それを前提に以下お読みください。

 

 

カリフォルニア州の司法試験とは?

試験内容

毎年2月と7月の最終火曜日と水曜日の2日間に亘って開催される、Essay(論文試験)5問、Performance Test(与えられた資料を基にシチュエーションに沿った書面を作成する試験。以下「PT」)1問及びMultistate Bar Examination(4者択一式の試験。以下「MBE」)200問の試験です。

 

合格率

合格率は、直近2回を例にとると、2017年7月は48.9%2018年2月は27.3%と結構幅があります。ロースクール卒業が5月のため7月はロースクール卒業直後の初回受験生が多く、2月は7月受験に落ちた人が多く受験するからなのか、7月の方が合格率が高い傾向にあるようです。

 

試験のスケジュール

試験のスケジュールは以下のとおりです。

1日目:午前 3時間     Essay 3問

   (⇨各問の時間配分は受験生に委ねられていますが、Essayは1問約1時間で回答することが想定されています。)

             午後 3時間半 Essay 2問+PT 1問

   (⇨各問の時間配分は受験生に委ねられていますが、PTは約1時間半で回答することが想定されています。)

 

2日目:午前 3時間       MBE 100問

   (⇨MBEは一問平均1.8分のペースで回答することになります。)

       午後 3時間       MBE100問

試験の合否が発表される時期は、7月受験が11月中旬で、2月受験が5月中旬以降とされています。

 

試験科目

MBEの試験科目

MBEの試験科目は以下のとおりです。

  • Civil Procedure(連邦民事訴訟法)
  • Constitutional Law(合衆国憲法)
  • Contracts(契約法)
  • Criminal Law and Procedure(刑法及び刑事訴訟法)
  • Evidence(連邦証拠法)
  • Real Property(不動産法)
  • Torts(不法行為法)

 

Essayの試験科目

Essayの試験科目は、上記MBE科目に加えて以下のとおりです。

  • Business Associations(事業組織)
  • California Code of Civil Procedure(カリフォルニア州の民事訴訟法)
  • Community Property(共有財産法)
  • California Evidence Code(カリフォルニア州の証拠法)
  • Professional Responsibility(法曹倫理)
  • Remedies(救済法)
  • Trusts(信託法)
  • Wills and Succession(遺言及び相続)です。

 

Real Property(不動産法)の一部分や、Community Property(共有財産法)、Remedies(救済法)、Trusts(信託法)及びWills and Succession(遺言及び相続)を除けば、日本の弁護士であれば、日本の司法試験予備校や法科大学院で習った覚えのある内容が多く、そこまで構える必要はないと思います。

 

ラップトップPCでの受験

Essay及びPTについては、自分のラップトップPC(MacBookも可)を試験会場に持ち込み、事前にダウンロードしておく試験専用ソフト上で答案をタイピングして作成します。もちろん、最初から手書きを希望する人や、不幸にも途中でパソコンがフリーズ等した人のために手書きのオプションもあります。

ラップトップPCでの受験が一般的なため、英語でのタイピング能力がある程度必要になります。上記試験専用ソフトには、スペルミスのオートコレクト機能はついておらず、スペルミスには赤色の下線が引かれ、正しいスペルの候補がサジェストされるだけなので、スペルミスが多いとチェックにかなりの時間を要することになります。正解のスペルからあまりに遠いと、候補のスペルをサジェストしてもらえず絶望的な気分になります。ちなみに私は、本番中、緊張からか答案内で頻出する単語である「Plaintiff(原告)」のスペルを毎回間違える地獄に陥ってしまったので、最初から「P」と省略化するなど、積極的に略語を使えばよかったなと後から思いました。

なお、当然ですが、ラップトップPCを持ち込めるといっても、試験中にインターネットを利用したり、PC内に保存されている資料等を参照することはできません。

 

採点方針

英語を母語としない人にとっては大変有難いことに、スペルミスや文法の誤りを理由に減点されることはなく、あくまで内容で採点されます

配点の割合は、Essay(35.7%)+PT(14.3%)で50%、MBE で残りの50%です。なお、2017年7月の試験より前は、MBEの配点割合は35%で、Essay+PTで65%を占めていました。

昨今、最低合格点の引き下げも議論されているようですが、今のところ1,440点(2,000点満点)で据え置きのようです。 

 

試験の成績

不合格の場合は答案が返却され、自分の点数も知ることができるのですが、合格した場合は答案は返却されず、点数も順位も明かされません。結果発表後、優秀答案がThe State Bar of California(カリフォルニア州の法曹協会。以下「CA Bar」)のウェブサイトに掲載されます。

 

試験会場

出願時に、カリフォルニア州各地の試験会場から希望する会場を複数選びます。2018年7月の試験では、ロサンゼルス・コンベンションセンターという、ロサンゼルス国際空港から車で30分程度の会場も選べるようになりました。その他、ロサンゼルスエリアの試験会場は、空港から近い順にパサデナ・コンベンションセンター(車で40分程度)、オンタリオ・コンベンションセンター(車で1時間程度)と続きます。

蛇足ですが、パサデナは、とても洗練されたかわいらしい街で市内観光にも適しています。オンタリオは、試験会場から車で10分程度のところにオンタリオ・ミルズという大きなアウトレットがあるので、受験のご褒美として思う存分お買い物するのに適しています。

その他の受験会場については、CA Barのウェブサイトをご確認ください。

 

宿泊施設

試験会場の近くに宿をとる受験生がほとんどなので、早目に近場(徒歩圏内が望ましいです。)のホテルを押さえておいた方がよいと思います。CA Barのウェブサイト上で、受験生であれば通常より安価で泊まれる提携ホテルがいくつか紹介されています。そうは言っても提携ホテルはやはり高いので、私はExpedia経由で近くのモーテルを予約して宿泊しました。

なお、日本とカリフォルニア州の時差は7月受験時だとサマータイム中なので16時間日本が先、2月受験時だと17時間日本が先になるので、日本からの受験生は時差ボケ調整のため、早目にカリフォルニア州入りする方が多いようです。

 

受験の出願手続

SSNを持っている人

アメリカのソーシャルセキュリティーナンバー(社会保障番号。以下「SSN」)を持っている場合は、オンラインで出願申請ができます。

MBEの試験で配られるマークシートには、自分のSSNの下4桁を記入する欄があり、SSNを使って出願手続した受験生は記入が必要です。試験会場内には携帯電話や財布、SSNカードの持ち込みができないので、下4桁を暗記していない受験生(SSNを付与されているものの、馴染みの薄い外国人受験生に多いと思います。)には動揺が走ります。下4桁が記入できなくて落ちることはないと思いますが、精神衛生上、事前に暗記しておくのがよいと思います。

 

SSNを持っていない人

SSNを持っていない場合は、CA Barから出願書類を取り寄せ、届いた書類に手書きで必要事項を記入し、送り返す作業が必要になります。出願書類の記入事項がかなり多く、オンラインで受験申請できた方が随分楽なので、過去にアメリカ滞在歴がある方は、SSNを付与されたことがないか、念のためご家族に確認してみるとよいと思います。私の場合は、一旦手書きの申請書類を取り寄せた後に、約30年前にSSNを付与されていたことが発覚したので、結局オンラインで申請することができました。

なお、申請書類は、以下のようなメールを送って取り寄せました。

宛先:msc@calbar.ca.gov

題名:Application Form Request 

本文:

To Whom It May Concerns:
I would appreciate if you could send me all the necessary documents to apply for the State Bar of California ([受験予定年月]) for the attorney applicant in jurisdictions outside the US, including SSN Exemption Form, to the following address:

[氏名] ([Mr. / Ms.])
[住所]

Best regards,

[氏名] 

 

受験費用

受験費用は、$677+ラップトップPCで受験する費用$153=$830かかります。申請が遅れるとLate Filing Feeが加算され、さらに高額になっていくのでお気をつけください。 

 

ニューヨーク州の司法試験との違い

ニューヨーク州の司法試験は、アメリカのロースクールを卒業していないと受験できません。アメリカのロースクールに留学した日本の弁護士の多くは、ニューヨーク州の司法試験を受験する傾向にあるようです。MBEの問題はカリフォルニア州の司法試験と共通ですが、Essayの問題や試験範囲は異なり、また、PTではなくMultistate Performance Test(カリフォルニアを除く複数の州の試験で共通して出題されるPerformance Test。以下「MPT」)が出題されます。その他の詳しい内容は、実際に受験された先人達が詳しくブログ等で綴っているので、ご興味がある方はそちらをご確認ください。

 

私の受験歴

2度目の受験で合格

 私は、2度目の受験で合格することができました。1度目の受験は、全くの準備不足で受験費用の無駄使いでした。そうは言っても1度目の受験勉強も合格の下地になっていたと思うので、どのような勉強をしたか、以下簡単に記しておきます(全く参考にならないので、下記「合格につながった勉強法」に飛んでよいと思います。)

 

1度目の受験時の勉強期間や勉強法

  • 試験4ヶ月前から、後述する「日本人ノート」を少し読んではどこかにしまい、どこまで読んだか忘れるという作業を繰り返す。MBE全科目については一通り1回は読んだ。
  • 試験2ヶ月半前から、後述する「Emanuel (エマニュエル)」というMBEの問題集を解き始める。
  • 試験2ヶ月前から、アメリカの大手司法試験予備校であるBarbriの講座を受講し始める。同講座についてくるMBEの問題を解く。後述するBarbriのEssay教材を使って、各科目3問ずつ程度、答案構成をし、参考答案を読んでは拾うべき論点の多さにげんなりする。BarbriのPTの講義は初回だけ聞いて、「指示メモを読んだら、先にLibraryの判例を読む」というテクニックのみを得る。
  • 試験1ヶ月前から、後述する論証集の暗記に励む。

試験直前まで1日1分も勉強しない日も多くあり、勉強時間が累積してどれくらいだったか見当もつきません。EmanuelとBarbriのMBEの問題は4分の3程度は解いたと思いますが、「日本人ノート」の内容もよく頭に入っていない状態だったので、何の知識が問われているのか分からないまま、時間を計らずぼんやりと解いていました。また、答案を時間内に書く練習をしたこともなく、BarbriのEssay教材に載っているもの以外は本番の過去問を見ていませんし、PTもぶっつけ本番でした。Barbriの講義については、科目毎の講義は流し見程度に視聴しましたが、EssayやPTの講義はほとんど視聴できませんでした。

 

1度目の受験結果

前述のとおり、不合格だと答案が返却され、自分の点数を知ることができます。合格後に1度目の受験の答案を廃棄してしまったため正確な点数はわからないのですが、Essay科目は、スケーリング前の点数で、1つだけ55点(100点満点)で残り全て50点(100点満点)だったような記憶があります。  MBEの点数は覚えておらず、総合点はたしか1300点弱程度(合格最低点は1,440点)で、惜しくもなんともない点だった気がします。

以上のとおりの有様で、1度目の受験に手応えはありませんでした。しかし、受験後すぐに勉強を再開する気にはなれず、結局、1度目の受験後3ヶ月間は全く勉強せずに過ごしてしまいました。

 

 合格につながった勉強法

次の試験の4ヶ月程前から気持ちを入れ替えて、以下のような勉強をしました。直前1ヶ月半前までは全く勉強しない日もありましたが、その後は一日6〜7時間程度は勉強していたと思います。

 

MBEの勉強法 - AdaptiBarを2000問解いた

日本人ノート

アメリカのロースクールに留学経験のある人なら誰しもが持っているであろう「日本人ノート」と呼ばれる先人達の知恵が詰まった資料(アメリカの大手司法試験予備校であるBarbriの講義資料に、日本語で補足等が加えられたバージョン)を、再度通読しました。この「日本人ノート」は分量が多く、また性質上、眠気を誘うので、これを読む作業が一番辛かったような気がします。

 

AdaptiBar

試験2ヶ月弱前に「AdaptiBar(アダプティバー)」という教材($395)を購入しました。購入直後に少し問題を解きましたが、Essayの勉強に集中していた期間は手を付けられず、試験1ヶ月弱前から1日65問ずつ解いて、最終的に2000問ぴったり解きました。2000問全問の正答率は70%ちょっとでした。

日本人受験生の中では、このAdaptiBarの他に、「Emanuel(エマニュエル)」と呼ばれるMBE問題集やBarbri作成の問題も教材として検討対象に挙がることが多いかと思います。私もEmanuelやBarbri作成の問題にも手を出しましたが、最終的にAdaptiBarに落ち着いたのは以下の理由からです。

  • 全体の問題数が多く(全1,955問)、その多くが実際に過去に出題された問題なので(1,740問/1,955問)本番の感覚が掴みやすかった。
  • 紙媒体ではなく、ウェブサイトやアプリ上で問題を解いて解説を読むので、単語の意味を調べたいときに画面ワンタッチで済み、ストレスフリーだった。
  • 他の受講者の進行具合や問題毎の正答率や表示され、落とせない問題とそうでない問題を区別できた。
  • 回答に至るまでの時間を計ることができ、自分の問題を解くスピードと向き合うことができた。
  • MBEの試験形式である、それぞれの科目の問題入り混じり(科目毎に出題されない)形式で問題を解くこともできた。
  • ソファやベッドで携帯片手にゴロゴロしながら勉強できた。

AdaptiBarの難点を挙げるとすれば、本番のように問題に手書きで書き込みができない点と、ハイライト機能に保存機能がなく後からハイライトした解説箇所を見返すことができない点(この点は私の操作ミスかもしれません。)かと思います。ちなみに、私がAdaptiBarを始めた際には、紹介者及び被紹介者の双方が30ドルoffになるキャンペーンをやっていたので、購入される方は事前にキャンペーンをチェックしてみてください。

Emanuelも過去問500問以上、全体で600問以上を収録しているようですが、過去問がAdaptiBarのものと重複しているので、 AdaptiBarで勉強するのならEmanuelは解かなくてもよいと思います。Barbri作成の問題は必要以上に細かく、難易度が高いので個人的にはあまりお勧めしません。

なお、MBEは試験終了後に問題冊子も回収されてしまうので、私の知る限り本番の過去問は無料では出回っていないと思います。

 

Essayの勉強法 - 過去問を解きながら論証集を作り暗記した

日本人ノート+Barbriのハンドアウト

「日本人ノート」はニューヨーク州の司法試験受験生を対象に作成されているので、カリフォルニア州のEssayでのみ問われる科目については、1度目の受験時に視聴したBarbriの講義のハンドアウトを再度読みました。 

 

論証集

カリフォルニア州の司法試験に合格した日本人が作成した、かなりあっさりした論証集をざっと暗記しました。この論証集は、「日本人ノート」とともに出回っているニューヨーク州の司法試験受験用の「論証ブロック」をベースに、Barbriの教科書等を参考にカリフォルニア州の司法試験向けに手を加えられたものです。

なお、試験後になって初めて知りましたが、Smart Bar PrepCritical Passといった会社から論証集が販売されているようです。カリフォルニア州の司法試験のEssay科目を全て網羅しているかは確認していませんが、ネットを検索すれば他にも有料/無料のものがあるように思います。

 

BarbriのEssay教材を使った答練ゼミ

働きながら合格を目指す兼業受験生の友人と答練ゼミを組み、BarbriのEssayの教材(本番の過去問+公式に発表されている優秀答案をベースにBarbriが作成したと思われる参考答案+Barbri作成の配点表)を使用して、試験4ヶ月前から週2通のペースで答案を作成し、お互いに添削し合いました。試験2ヶ月前に、このペースだと終わらないことに気がついたので、週5通(MBE科目+過去の傾向から次回出題される可能性の高い、MBE以外の1科目)答案を作成し、それ以外の科目は答案構成のみを週3通作成し、友人と送り合うことにしました。

 

公式優秀答案の研究

友人との答練ゼミと並行して、これとは別に、試験1ヶ月半前頃からCA Barのウェブサイト外部のウェブサイトで無料で入手可能な過去問(2002年2月分以降)を解いたうえで、公式の優秀答案を読み、問題文で提示される事実の評価の仕方や読みやすい見出しの付け方の研究を一人で行いました。この優秀答案はまさに知恵の宝庫で、「1時間程度の時間でここまで多くの論点を網羅し、かつ、こんなに事実を深く分析して評価できる受験生がいるのか!」と感心するばかりでした。書いてある分量も尋常でなく「この受験生は3時間全てを1問に費やしてしまったのでは?」と思わせる程でした。

なお、ここでの作業では、過去の出題傾向から次回絶対に出ると確信した科目は実際に時間を計って答案を作成し、出題可能性が微妙なのものは答案構成だけしました。そして、絶対に出ないと確信した科目(MBE科目は連続して出やすいので注意してください。)は、論証集を直前にさらっと読んだ程度の勉強しかしておらず、過去問は見ていません。

 

以上の作業を通じて、友人の答案や優秀答案から素敵な表現を盗んだり、過去に出題された論点はほぼ全て網羅できるよう、優秀答案や大手予備校の教科書を参考に新たに論証を作ったりして、論証集を自分仕様にブラッシュアップしました。最終的には、この論証集をほぼ一語一句暗記しました。ネイティブではないハンデをカヴァーするには、ルール(規範)は即座に書けるようにして、当てはめの時間を捻出するしかないように思います。

これらの作業により、初めの頃は科目によっては2日かけて一問の答案を完成させていましたが、直前期には1時間以内に書けるようになりました。書く分量は、科目や問題によっても異なりますが、1200単語程度を書くことを目指していました。

 

PTの勉強法 - MPTを過去8試験分解いた

2017年7月の試験以降、それまで180分だったPTは90分に変更になりました。90分になってからの過去問がまだ少ないので、MPTの過去問で勉強するのがよいと思います。私も試験3週間前からMPTを過去8試験分(1回分のMPTに90分の問題が2問含まれているため、合計16問)を時間を計ってだいたい1日1問のペースで解きました。

MPTを実施する全ての州の法曹協会のウェブサイトは確認していませんが、ジョージア州の法曹協会のウェブサイトが見やすかったので、同サイトから問題をプリントアウトしました。問題を解き終わった後は、ジョージア州の法曹協会のウェブサイトとニューヨーク州の法曹協会のウェブサイトで公表されている複数の優秀答案のうち、最も分量の少ないものを参考に、問題パターン毎の冒頭の書き出しや、見出しの付け方、参照資料の引用の仕方を自分の中で決めました。

練習では一度も時間内に書き終わったことはありませんでしたが、PTの本番ではなぜか問題が易しく感じられ、なんとか書き上げることができました。

受験生の中でPT対策をここまでする人はあまりいない気もしますが、PTで問われる、制限時間内に与えられた判例を読み、指示に従って英語でまとめるという能力は、試験の合否とは関係なく獲得したいものだったので、(16問解いたところで獲得できたかは疑問ですが)いい勉強になりました。

 

試験の手応え

Essayは、未知の論点が正面から聞かれることはなく、細かな間違いや漏れはありましたが、書き上げた後にスペルチェックも全問終えることができました。

PTは、前述のとおり簡単には感じたものの、Essayで時間が押してしまい途中2行程度スペルチェックが完了せず、スペルミスが残ってしまいました。

MBEは、手応えがありませんでした。ただ、同様の感想を持っている受験生が多かったようです。

総合的には、 MBEの手応えがなかったので、そこまで自信はありませんでした。同時に、これ以上勉強のしようがないとも思っていたので、落ちても次回は受ける気はありませんでした。なので、合格を知った時はホッとしました。一緒に答練ゼミを組んでいた友人と揃って合格することができました。

 

これから受験勉強を始めようと考えている方へ

大手司法試験予備校の講座は高額なので、途中で勉強を断念せざるを得なくなった場合を考慮して、以下の順序で勉強を開始するのがよいかもしれません。

  1. 「日本人ノート」を知り合いから入手してMBE科目の範囲をひと通り読み、AdaptiBarかEmanuelを解いてみる。
  2. 1の作業を経てもまだ受験するモチベーションを維持できているならば、大手司法試験予備校の講座を受講して、Essay科目等の勉強をする。

「日本人ノート」でMBE科目は網羅されているので、個人的には、BarbriのMBE科目の講義を視聴する時間は他の勉強にあててもよかったかなと思います。

 

必要な英語力

前述のとおり、カリフォルニア州の司法試験の答案の採点にあたっては、スペルミスや文法の誤りを理由に減点されることはなく、あくまで内容で採点されることになっています。もっとも、内容が正確に採点者に伝わるレベルの英語で書く必要はありますし、何より書くべき分量も多いので、それなりの英語力はやはり必要だと思います。

合格に必要な具体的な英語力は一概にはいえませんが、これまでの私の知る合格者をみると、1度目の受験で合格しているのは、アメリカのロースクールを卒業しており、なおかつ元々帰国子女の方が多いように思います。もっとも、2017年7月の試験以降、前述のとおり、MBEの配点割合が50%に上がったことで、ネイティブではない受験生がより受かりやすくなったとも言われており、今後は、海外経験のない方も多く合格するようになってくるかもしれません。

個人的な印象ですが、カリフォルニア州の司法試験は、日本の司法試験よりも問題がはるかに素直で論点も限定されているため、日本の司法試験合格者であれば、法律に特化したリーディング力及びライティング力を備えれば十分に合格できる試験だと思います。また、現時点では英語力にそこまでの自信はなくとも、カリフォルニア州の司法試験の勉強を通じて、リーディング力及びライティング力を向上させることも、もちろん可能だと思います。

 

一般的な受験生の勉強期間 

一般的な日本人の受験生は、遅くともアメリカのロースクールを卒業した後の5月中旬から約2ヶ月間、Barbri等の司法試験予備校の講座を受けながらフルタイムで勉強して7月の試験に臨みます。

試験科目の中には、ロースクールで習っていない科目も少なくなく、その意味では、ロースクールを卒業していることと試験の受かりやすさはそこまで直結していないように思います。もっと言えば、試験に直接関係しないロースクールの課題や試験に時間をとられるよりも、その期間をカリフォルニア州の司法試験の勉強のみにあてられた方が、「合格」という目標を達成するという点に限っては、より効率的なのかもしれません。

 

子育て中の勉強時間の捻出について

2度目の受験勉強を本格的に始めた頃、子どもは1歳になるちょっと前くらいでした。当時は、昼は1時間半程度、夜は7時過ぎから朝7時頃までぐっすり寝てくれていたので、基本的には子どもの就寝時間を利用して勉強していました。

この睡眠スケジュールは、「ジーナ式」と呼ばれる英国のナニーが確立した育児スケジュールに倣ったものです。我が家では、生後早い段階から「ジーナ式」のスケジュールを可能な範囲で実践していたからか、生後3ヶ月の頃には深夜の授乳がなくなりました。寝つきも比較的よい方だったと思います。また、黄昏泣きや夜泣きもなく、睡眠不足が原因で勉強が捗らないということはありませんでした。この点は赤ちゃんの生まれ持った性質によるところが大きいと思うので、スケジュールどおりにいかない時があっても、個性と受け止めて気にし過ぎないようにするのが一番だと思います。「ジーナ式」については、他の方がかなり詳細にブログにまとめているので、気になる方は検索してみてください。

このように、比較的まとまった勉強時間を確保しやすい環境にはありましたが、さすがに試験1ヶ月前になると公園に連れて行く時間を捻出するのが難しくなり、家の中だけで遊ばせたり、家族に代わりに散歩に行ってもらったりし、子どもや家族にも負担をかけてしまったと思います。「育休の使い方を間違ってるのではないか」と自問自答し、辛くなることもなかった訳ではありません。
色々と葛藤はありましたが、受かった今となっては挑戦して本当に良かったと心から思います。

 

最後に

前述のとおり、カリフォルニア州の司法試験では、合格した場合は答案が返却されず、点数も順位も明かされません。なので、上記のような勉強法で、自分が合格者の中でどの位置にいるのか全くわかりません。また、自分の勉強法が他の方にお勧めできる効率のよいものとも思えません。ただ、アメリカのロースクールに留学せずとも、育休期間を利用してカリフォルニア州の司法試験に実際に合格できたので、一つの選択可能なキャリアアッププランとして自分の経験をお伝えしたく、綴らせていただきました。